ひとりじゃないよ

これはちょっぴりホントのお話です。

・・・

今日はほんとにつまんなかった。

あんじゅちゃんの夕方ぽつりと帰り道。

何がつまんなかったかって

つまんないものはつまんない。

ブランコ乗っても つまんない。

滑り台すべっても つまんない。

おにごっこだって つまんない。

だって、おにばっかりなんだもの。

あぁ、ほんとにつまんない。

ぽつんと石ころ蹴ってみた。

・・・

「いたいっ」

・・・残念ながら、あんじゅちゃんには聞こえない声。

なにをやっても 

つまんないものはつまんない。

きっと、家に帰ってもつまんない。

だって、ママはいつだって忙しい。

まだ帰っていないにきまってる。

あぁ、ほんとにつまんない。

あんじゅちゃんの夕方ぽつりと帰り道。

涙がじんわり 帰り道。

・・・

「くすくす見てみて♪」

「あはは、どうしちゃったの?」

「ちょっと、なにやってんの、早く見てご覧よ。」

あはははは、あはははは

・・・残念ながら、あんじゅちゃんには まだ聞こえない声。

あ~あ!

ひときわ大きなため息をつきながら、あんじゅちゃんは空を見た。

何気なく見上げた東のお空。

あんじゅちゃんのため息が「ひっ」っとひっこんだ。

空には まあるいお月様。

ただし、

ただのまあるいお月様じゃない。

そこにいたのは

いつもの2倍はありそうな、はちきれそうにまあるいお月様。

しかも。

ふー、ふー、ふー、ふー

お月様ときたら

どうみても体があんまり重すぎて

空を登っていくのは至難の業。

至難の業って、とってもむずかしくて、できそうにないってこと。

でも、ものすごーくなんとかすれば、どうにかなるかもしれないってこと。

「ひひひっ」

あんじゅちゃんは思わず笑った。

お月様が、ふーふー言ってるんだよ。

これってお月様には悪いけど、なんだか笑えちゃう。

もっと近くで見たいと思ったあんじゅちゃん。

東公園のそばにある、マンションの屋上ならもっとよく見えるって気がついて

思わず今度は駆けだした。

「あら、あなたも気がついたの?くすくすっ」

「うん。ふふふ。」

「おかしいよね、ね。」

「うん。くふふ。」

くすくすくすっ、くすくすっ

うんと言ってから、あんじゅちゃんは気がついた。

いったい だぁれ?

声の主は ひとりじゃないよ。

目の前にふわふわしたもの。

ふわふわしているのは、やわらかそうな羽、羽、羽。

羽の持ち主は・・・3人のこびと?

「やだなぁ。あたしたちは、天使。」

「そうそう、ひとりじゃないよ、いつも一緒。」

あ、そっか。

羽が生えてるから天使か。

天使なんて見たのは、はじめて!っていうより、いるなんて考えたことなかった。だから びっくり。

「くすくすっ。早く行こうよ。お月様空からおっこっちゃうかも!」

「くすくすっ。そうそう、助けなくっちゃ。」

「だってさ、ひとりじゃないよ、いつも一緒。」

あんじゅちゃんとにぎやかな天使達は、東公園へおおいそぎ。

あんじゅちゃんは、まわりをわいわい飛んでる天使達を見てにんまりした。

この天使達は・・・そう!「わいわい天使」だ、きっと。

東公園のそばのマンションの屋上。

思った通り、ますます太って見えるお月様にぐんと近づいた。

「お月さまぁ。いったいどうしちゃったのぉ?」

「食べすぎたんですよ、つい・・・ふー。」

「あはは、食べ過ぎ、食べ過ぎ。」

「笑い事じゃ、ありませんよ、ふー。見てのとおり、空を登ることができません。」

「ねぇねぇ、いったい何を食べたのぉ?」

あんじゅちゃんとわいわい天使、お月様の困ったことなど聞いてない。

「昨日、見てきた国がね・・・なんとお菓子の国でね・・・ふー。

あんまり私が欲しそうにしていたものだから、これもあれもとごちそうに。ふー。

お菓子の家まで食べちゃった・・・ふー。」

「えぇ、お菓子の家!?」

「ふー。なんとかならない?空へ登らなくちゃ私の仕事がつとまらない・・・」

あんじゅちゃんとわいわい天使はちょっぴりこまった。

「なんとかって、どうする?応援はしてあげるけどさぁ。くすくすっ。」

「だって、お月様は大きすぎるし、重すぎる。私たちは、小さすぎる。」

「そう、応援!お月様、はちまき巻いてみれば?」

「ねぇ、あんじゅちゃん、なにかはちまきになりそうなもの、ない?」

「えっとね・・・」

ポケットの中に、苺の絵のかわいいハンカチ。

「じゅうぶんだよ。」

わいわい天使は、ハンカチのはじをう~んとひっぱって、お月様のあたまにくるりと巻いた。

りっぱに はちまき。

なんて、都合よくできてるの!

「さ、お月様、がんばって!」

「ありがとう。う~~ん」

お月様は顔を赤くしてうなっているけど、体はちっとも動かない。

それどころか、ますますふー、ふー、言い出した。

「あのぉ・・・きあいは入るんですけど、体がいうこときかなくて・・・」

くすくすくすっ、くすくすくすっ

笑い事じゃないけど、やっぱりおかしいね。

でもでも、どうする?

あんじゅちゃんが言った

「だれか、引っ張ってくれるといいのにねぇ」

わいわい天使が

「いるいる、引っ張ってくれる人!」

だぁれ?

「ほら、今にも沈みそうな太陽。そうだ、綱引き、綱引き」

「ねぇ、あんじゅちゃん、なにか綱になりそうなもの、なぁい?」

「えっとね・・・」

あんじゅちゃんは、自分の足元を見た。

あ・・・くまの絵がついたハイソックス。

「じゅうぶんだよ。」

わいわい天使は 両方の靴下を結んで、ぐーーーんと太陽のところまでひっぱった。

りっぱに つな。

なんて 都合よくできてるの!

「太陽さん、お月様と綱引きしない?ちからくらべよ、ちからくらべ」

わいわい天使にのせられて、太陽すっかりその気になってる。

あんじゅちゃんは、そっとお月様に耳打ちしたよ。

「お月様、負けなきゃだめよ。」

「オーエス、オーエス」

あんじゅちゃんとわいわい天使。

すっかりのせられた太陽は、ちからいっぱい つなをひく。

負けたら、たいへん。西の空へしずめなくなってしまうもの。

「オーエス、オーエス」

あんじゅちゃんとわいわい天使。

太陽、あんまり力を込めるものだから、あたりの空までまっかっか。

じりじり じりじり

お月様が空を登り始めたよ。

「きみたちどうも ありがとう。そろそろお帰り、日が暮れる。」

お月様は、太陽にひっぱられながら、にやりとしたよ。

「じゃぁねー」

あんじゅちゃんは、気がついた。

わいわい天使のひとりのおでこに、ちいさなたんこぶ。

「あら、たんこぶ。どうしたの?」

「やだなぁ・・・さっきあんじゅちゃんが蹴った石があたったっていうのに。」

「そうだったの?ごめんね。」

「べつに、痛くないからいいんだけど、これからは気をつけて。」

あんじゅちゃんは、「にひひ」と笑って、

「痛くないなら、せっかくだから、かわいくしてあげる。」

ポケットからカラーペンを取りだして

あんじゅちゃん、わいわい天使のたんこぶに にこにこ笑顔の顔描いた。

顔のとなりに、羽も忘れず描いてみた。

「きみって子は・・・なんてゆかいなんだ。気に入った。」

「あははははは、あははははっ」

描かれた方も、笑っているから、ま、許してあげますか。

・・・

あんじゅちゃんの家にあかりがついてる。

今日は、もうママが帰ってる!

「ただいまー」

「おかえり。あら、靴下どうしちゃったの?」

「ごめんなさーーーい。ないしょーーー。」

あんじゅちゃの顔 にっこにこ。

つまんなすぎて泣き出しそうだったことも、すっかりどこかへ飛んでってるね。

ふと見かけた でぶっちょのお月様と、わいわい天使。

くふふ、へんてこ。

だけど、だけど。

もしあのとき つまんなくなかったら、出会えてなかったかもしれないよね。

つまんない日、バンザイ。

ホントに今日がつまんない日でよかった。

へんてこだけど、つまんない日でよかった。

それからのあんじゅちゃんに、

つまんない日がなくなったわけじゃない。

それよか つまんない日の方が多いくらい。

じわんと泣いちゃう日だってある。

だけど、だけど。

わいわい天使と でぶっちょのお月様のことを思い出すと

あんじゅちゃん、小さく笑うってくせがついた。

あのへんてこなできごとは、いつまでも笑わせてくれるから

つまんない日も前よりはぜんぜんいいらしい。

ときどき、わいわい天使も寄ってくるし。

わいわい天使のくちぐせは、やっぱり こう。

「ひとりじゃないよ、いつも一緒。」

          

わいわい天使、今日は何して遊ぶ?

「ひとりじゃないよ、いつも一緒。」

(C)tukkin-2002.7

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